経営方針
株主・投資家へのメッセージ
銀行を超えた「テックカンパニー」を目指す
イノベーションの軌跡と「プラットフォーマー」としての進化
当社は、2007年9月の創業以来、さまざまな国内初のイノベーションを実現してきました。
私が社長に就任した2014年以降、オープンAPI・クラウド・モバイル・AI・ブロックチェーン・セキュリティといった先進的なテクノロジーの活用を通じて、デジタルバンク・BaaS(Banking as a Service)・THEMIXという3つの事業を展開してきました。例えば、銀行初※1の「APIの開放」、住宅ローンにおける「完全AI審査」・「代理店ビジネスモデル」・「かんたん住宅ローン」の開発、「NEOBANK」事業の立ち上げなど、業界に大きな変革をもたらす取組みにより着実に成長を続けています。
今後、さらに銀行を超えた「テックカンパニー」として飛躍すべく、「プラットフォーム」事業にも注力していきます。金融領域においては、「AI審査」や「セキュリティ」・「NEOBANK®(ネオバンク®)」※2・「かんたん住宅ローン」などの各種「プラットフォーム」事業の推進、非金融領域においても、「第一次産業DX」や「カーボンクレジット」・「金融データプラットフォーム」事業の新規開発により、ROE20%を早期に達成し、引き続き中長期的な企業価値向上と利益成長の加速に取組んでまいります。
2023年3月29日にネット専業銀行として国内で初めて東証スタンダード市場への上場を果たし、上場直後の2023年度は当社にとってきわめて重要な年でした。海外金融機関破綻、日銀によるマイナス金利政策の解除、急激な円安などの金融市場に与える影響が大きい環境下ではありましたが、ステークホルダーの皆さまのご支援により順調に利益を伸ばすことができました。
中期事業目標の最終年度においても各事業で戦略的に取組んでおります。
デジタルバンク事業では、預金量・顧客数を着実に増やしつつ、同時に住宅ローンによる貸出においても圧倒的なシェアNo.1ポジションの維持、さらなる成長を目指します。また、政策金利引き上げに伴い2024年5月に、短期プライムレートの引上げを行いました。「金利ある世界」でも強い成長を維持できるよう慎重に戦略を進めていきます。
特に当社の強みである「住宅ローン」は、現在、国内行における年間実行額シェアはトップを誇り、AI審査やBtoBtoCプラットフォームの提供及び独自のFC代理店モデルによる「ハイテクとハイタッチの組み合わせ」で、量と質を向上させ、実行件数の拡大を実現しています。今後、さらに成長を加速し、将来的にはマーケットシェアを20%まで引き上げていくのが目標です。
当社の優れた銀行機能をパートナー企業に提供し、パートナーの本業を支援するBaaS事業 「NEOBANK」についても、さらに導入社数増加を目指します。現在、当社はBaaSの先駆者としてすでにフルバンキングBaaSでNo.1※3のシェアを獲得しておりますが、さらに盤石とすべく、今後もあらゆる業界への「マルチプラットフォーム戦略」を推進し、中期的には100社とのアライアンスを実現したいと考えています。
そしてTHEMIX事業は、次の大きな柱に育成すべく取り組んでいる新規事業領域です。第一次産業DX・カーボンニュートラル実現のためのカーボンクレジット事業やより最適な広告配信を実現する金融データプラットフォーム事業などが、今年ようやく本格稼働できる目途が立ちました。すでに多くの企業や自治体との協業が進んでおり、順調な立ち上がりとなっています。
各事業の成長ペースを維持、加速することによりROE20%という目標もそう遠くはない将来において実現できる可能性が高まっていると実感しております。
社会課題を解決し、豊かさが循環する社会を創っていく
当社は、新時代における革新的なビジネスモデルの創造に向け、AIなどの最先端テクノロジーを積極的にビジネスに活用することにより多くのイノベーションを実現し、環境変化に素早く適応できるビジネスモデルを構築していきます。
経済価値と社会価値の継続的な向上のため、優先的に解決すべき重量課題として「マテリアリティ」を特定し、持続的成長と社会への貢献に向けた取組みを強化しています。DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)による多様性の確保や、イノベーションの推進を支えるスキルをもった人材の育成・獲得による「人材資本の強化」、GRC(ガバナンス・リスク管理・コンプライアンス)の高度化などの「経営基盤・ガバナンスの強化」に取組むとともに、社会的価値のある事業への積極的な投資(=ソーシャルインベストメント)により社会課題解決型の企業の立ち上げやビジネス支援を通して、イノベーションの推進を図っていきます。
加えて、未来の地球環境を守るための「気候変動への対応」に向けた施策を推進しており、最先端テクノロジーを活用したゼロカーボンに向けた取組みを開始するなど、脱炭素社会の実現に向けた第一歩を踏み出しました。
たとえば2023年10月に設立した当社子会社の株式会社テミクス・グリーンでは、カーボンクレジット市場を創造し、第一次産業へと富を移転する取組みを進めています。これにより、第一次産業の収益力が向上し、再投資できるようになれば、適切な農地や森林の管理が可能となり、CO2の吸収量を上げることができるようになる。そしてそこから生まれたカーボンクレジットを第二次産業・第三次産業企業が購入し、オフセットするなど、正の循環が生まれてきます。この例に限らず、積極的な最先端テクノロジーの活用によるサステナビリティへの貢献を果たしていきたいと考えています。
「お客さまに選ばれ続けるために」
利便性と安全性の両立
当社は、すべてのサービスにおいて「お客さま中心主義」を徹底しています。お客さまの満足度No.1を獲得し続けることこそが、経営における重要な指標のひとつであると考えています。
お客さまは常により良いものをお求めになりますし、新たな技術もどんどん生まれてきます。お客さまに選ばれ続けるためには、スピードをもって変化に対応していく必要があります。
お客さまのニーズや期待を上回るサービスを提供し続けるために、常にユーザーの声に耳を傾け、UI/UXの改善による顧客体験の向上、最先端テクノロジーによる利便性と安全性の両立、商品・サービスを磨き上げることによるより高い価値の提供など、社員一丸となって徹底的に取組んでいます。
また、高まるサイバー攻撃や不正への対策については十分な投資をし、速やかに対処していきます。本領域において、他行に先駆けた対策と相当額の投資を行っていると自負しております。国際標準規格であるFIDO認証※4を活用した高度な生体認証システムの導入や、オンライン上のなりすまし不正防止テクノロジーの導入を行うとともに、24時間365日の監視体制を構築。口座開設時、口座開設後の不正売買・不正利用の抑止にも力を入れています。
社長室の扉を開き、挑戦しやすい社風づくり
今年度は上場したことにより、例年以上に優秀な人材を採用することができました。また、今年5月に移転したオフィスもテクノロジー企業のような内装・雰囲気になっています。こうしたテクノロジー企業というイメージを強く打ち出すことで意欲の高い新卒や中途社員の採用が順調に進んでいることは嬉しい限りです。
私は社員の成長を促す上でもっとも大切なことは、「挑戦する機会を提供すること」であると日頃から考えています。そのため、社長室のドアをいつも開け放しており、「いつでも相談や事業提案をしにきてください」と社員に伝えています。人事制度にも「バリュー評価制度」を導入し、チャレンジせず成功した人よりもチャレンジして失敗した人の方が評価される制度となっています。また、今年から海外のエンジニアを数名採用、初の女性執行役員が誕生するなど、多様性の面からも事業成長を促進するための働きやすい職場づくりを目指しています。
ステークホルダーの皆さまへ 「バックキャストで未来を創る」
株主や従業員をはじめとするステークホルダーの皆さまへ、都度、発しているメッセージは「我々は社会をより良くするため、変革するために存在する」ということです。インターネット専業銀行からデジタルバンクへ、NEOBANK、THEMIXと私たちは3回進化を遂げてきました。金融領域の着実な成長と非金融領域の新規事業の創造と業界変革により、その先に理想とする「公正で、豊さが循環する社会」が待っていると考えています。
株価においても、時間の経過とともに市場からの評価も高まり、ようやくスタートラインに立てたと考えております。上場したことで、株主総会や各種ミーティングを通して株主の皆さまのお声を直接うかがえるようになったこと、多くの優秀な人材獲得につながったことなど、当社にとって非常に有益でポジティブな影響を与えてくれました。当社では、株主の皆さまとのコミュニケーションが重要だと考えており、皆様の声を直接拝聴することで、経営に活かすことができています。
私は、「経営は逆算だ」と捉えています。銀行を超えたテックカンパニーとしての成長を実現するために今何をすべきか、戦略的に考え実行します。
「テクノロジーと公正の精神で、豊かさが循環する社会を創っていく」というコーポレートスローガンのもと、「お客さま中心主義」を事業活動の基本に置き、今後も、ステークホルダーの皆さまに選ばれる銀行であり続けるため、更なる利便性の向上・魅力的な商品の提供、安定した経営管理・組織運営、強い利益成長を実現してまいります。
代表取締役社長(CEO) 円山 法昭
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※1当社が日本の銀行において初(当社調べ)となるサービスを導入したことを意味する。
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※2「NEOBANK®」は、住信SBIネット銀行株式会社の登録商標です。登録商標第5953666号。
「ネオバンク®」は、住信SBIネット銀行株式会社の登録商標です。登録商標第6455993号。 -
※3日本国内で預金・融資・決済を含む銀行機能をBaaSの仕組を通じて事業会社に提供する企業各社(GMOあおぞら銀行、SBI新生銀行、楽天銀行、みんなの銀行、三菱UFJ銀行および当社)を対象とし、2024年6月時点の口座数および提携者数を調査。当社調べ。
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※4「FIDO」とは、Fast IDentity Onlineの略で、「FIDOアライアンス」が開発・標準化を推進するオンライン認証の国際標準規格です。