【特別対談】日本航空 執行役員 大森 康史 氏 × 住信SBIネット銀行 代表取締役(CEO)円山 法昭
~未来を共創するパートナー~
住信SBIネット銀行株式会社 代表取締役(CEO):円山 法昭が、未来を共創するパートナー企業の皆さまと、これまで~現在そして未来に向けた取組について語る対談企画です。
空を超える可能性をお客さまの日常に見い出すJALマイルライフの具現化に向け、お取組みされている日本航空さまと金融を磨きあげ、最先端のテクノロジーと公正の精神で、銀行を超え、さらなる成長を目指す住信SBIネット銀行。
両社の事業TOPが、共創する金融サービスについて語ります。
- ※本対談は、2024年5月に住信SBIネット銀行本社にて行われました。
プロフィール
大森 康史 (おおもり やすし)氏
日本航空株式会社 執行役員 マイレージ・ライフスタイル事業本部長
1965年生まれ。1992年日本航空株式会社入社。
戦略会議付プロジェクトチーム マネージャー、欧州・中東地区支配人室旅客・国際グループ長、人事部グループ人事企画グループ長、事業創造戦略部長などを経て2021年より現職
日本航空さま × 住信SBIネット銀行 現在までの主な取組
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協業協議開始
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JALペイメント・ポート株式会社 設立
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JAL Global WALLET 受付開始
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JAL NEOBANK サービス開始
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JAL Pay サービス開始
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JAL マイレージバンクアプリ サービス開始
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金融ビジネスに取組むきっかけ
お客さまに喜んでいただけるサービス開発のために
多通貨プリペイドカード 「JAL Global WALLET」~ BaaS「NEOBANK」への挑戦
- 円山:
- 日頃は、JALペイメント・ポート(以下、「JLPP」)およびJAL NEOBANKなど、さまざまなお取組でお世話になり、ありがとうございます。
- 大森氏:
- こちらこそ色々ありがとうございます。
- 円山:
- 日本航空さんとお付き合いが始まったのは2016年くらいですかね?
- 大森氏:
- 当時、航空以外の事業も広げていきたいということで、金融領域をやろうと、飛び込みでアプローチをさせていただいた記憶がございます。
- 円山:
- たしか2016年の秋ぐらいに、日本航空さんから、当社ホームページ経由で提携についてのご相談をいただき、当時社内もざわざわしたのを覚えています。何かの間違いじゃないかと。
- 円山:
- 日本航空さまが我々のようなネット銀行と提携するとは当時考えられなかった。何か背景などあったのでしょうか?
- 大森氏:
- 当時は金融の中でも、まずは「国際ブランド付のプリペイドカード事業」をやってみたいと思っていました。
当社を利用されるかた、国際線などで海外に旅行されるかた・出張されるかたに向けて喜んでいただけるサービスを提供したいと考えた際、シナジーがある分野を検討していました。
特に、様々な種類のプリペイドカード事業でも、「両替機能がある事業」をやっていきたいということで、候補を色々探していた。その中で、業界内で住信SBIネット銀行さんの名前が出てきました。
- 円山:
- 大変光栄でございます。お話いただいた多通貨プリペイドカード「JAL Global WALLET」の立ち上げは非常にエキサイティングなものでした。
当時、我々もプリペイドカード事業に取組むのは初めてでしたので、経験も実績もなくゼロから作り上げることになりました。
その中で、我々が「JALさまに提供できる価値は何か」考え抜き、貴社のご希望を叶えるための最先端のテクノロジーサービスを世界中から探し出しました。
JAL Global WALLETの実現に向けて、世界各国で利用することが可能で、いつでも多くの通貨と両替ができる機能を持つプリペイドカードサービスを立ち上げるべく、海外でも最先端の多通貨プリペイドカードシステムを持込み、ご提案させていただきました。
そして、その段階では構想でしかなかった現在のNEOBANK、BaaS(Banking as a Service)による銀行機能をご提供し、JAL Global WALLETとともにサービス化できれば、日本航空さまにもメリットを感じていただき、我々としても新たなビジネスに発展するのではないかと考えご提案させていただいたのが、最初のご縁だったと思います。
- 大森氏:
- 我々も金融には知見がなかったので、最初は両替ビジネスをやろうとしか思っていなかったのです。しかし、金融のプロである貴社に、当社のアセットを見ていただき、NEOBANKのような、金融業界においても、当時最先端であったBaaSをご提案していただいたことは、その後の協業の拡大につながっていると感じます。
やはり餅は餅屋で、それぞれの業界のプロとプロが一緒に仕事をすることで新しいものが生まれると思っています。
- 円山:
- 当時、日本ではBaaSの事例が一つもありませんでした。
海外の事例は知ってはいたものの、日本でどうしたら実現できるのだろうと。
当社は、2015年からFintechに積極投資し、オープンAPI、クラウド、モバイル、AI、ブロックチェーンなどの最先端のテクノロジーに投資をしてきました。
これらを組み合わせることにより、BaaSが実現できるとわかってはいたものの、どのようなビジネスにするかを考えていました。
世界でも成功している事例がなく、BaaSとして銀行機能を提供する場合、世界ではベンチャー企業と銀行が手を組むしかなかったのです。
日本航空さまからお話を聞いた時、もしかしたらBaaSを成功させるカギは、「信頼あるブランド」を有し、質の高い顧客基盤をもつ大企業と組むことなのではないか。
日本航空さまとの案件を通じて、大企業とともにサービスの開発・提供を行うことで、はじめて成功するビジネスモデルが構築できるのではないかと気づくことができました。
- 大森氏:
- そのように言っていただけると私たちも光栄です。
大企業は、新しいことを始めることに対して、とても慎重になるところがあります。私たちのように安全・安心を最優先している企業においては、一つのミスも許されない。そのようなカルチャーで育った社員です。
当社は、優良な顧客基盤をはじめ、非常に良いアセットを持っていると考えています。
それを引き出すために、イノベーションのきっかけやフィンテックの知見、あるいは色々な失敗をいとわずにチャレンジするマインドを注入していただいたのが今につながっているのだと思います。ご一緒に仕事を進めている中で、当社の社員もチャレンジするマインドを持った人が増えてきた気がします。
- 円山:
- 同じように、我々も大変勉強させていただいております。
銀行というのは、どうしてもお客さまの預金を預かり、融資をして、決済をするという関係値でしかない。真にお客さまのお役に立てているのがわかりづらい業界で、お客さまには直接感謝をいただくことが少ない業界です。
我々は、直接的に旅行など、お客さまのエンターテインメントをサポートすることはできません。貴社と組むことによって、本当の意味でのお客さまサービスとはどういうことかということを学ばせていただいております。
航空から非航空、日常から非日常まで、すべての領域でお客さまとの接点を。
「JALマイルライフ」の推進にむけた住信SBIネット銀行での基盤開発
- 大森氏:
- お客さまに対するサービスのお話をいただいたので、今進めていることをお話させていただければと思います。
当社は、現在、「JALマイルライフ」を進めております。
「マイレージ」について、どうしても飛行機に乗った時のおまけと思われているかたが多いのが現状です。
実際にお客さまがマイルを貯める場合、飛行機に乗って貯める航空経由が3割で、残りの7割は航空以外の利用にて貯められます。
残りの7割は、貴社と協業しているJAL NEOBANKやJAL Payであったり、JALカードを利用したお買い物であったり、ふるさと納税や電気・保険などで貯められるものです。
そして、貯めたマイルの使い道のおよそ7割が、「非日常の体験」です。
例えば、特典航空券やスポーツ観戦、ミュージカル鑑賞やホテルのスイートルームにお得に泊まる、こういったことがマイル利用で実現できる。
今、当社が力を入れているのは、お客さまに日常でマイルを貯めていただき、それを利用して非日常での解放感やわくわく感など「プライスレスな体験」をしていただけるよう、JALマイルライフ戦略に基づき、JAL Life Statusプログラムを進化させていくことです。
「お客さまの豊かな人生につながるサービスや体験。それを創出し、お手伝いすること」が我々の役目だと思っています。
JALの大切なお客さまに、「わくわく」を感じ、豊かな人生を送っていただく。そのサービス提供の基盤となるのが「JALマイレージバンクアプリ」です。
アプリでマイルが貯められ、使うことができる。そして、JAL NEOBANKなどからのチャージを通じてJAL Payで決済ができる。これらすべてがひとつのアプリに集約され、便利に使えるというのが、インフラの中軸を担う「JAL マイレージバンクアプリ」なのです。
「JALマイレージバンクアプリ」をはじめ、付加価値の高いサービスを住信SBIネット銀行さんとともに開発し、お客さまに喜んでいただけるサービスをどんどん拡げていきたいと考えています。
- 円山:
- JALマイルライフ構想を実現する中軸となる基盤開発について、当社に開発のご用命をいただきました。銀行業を超え、システム開発パートナーとしてJAL Payの基盤開発とJALマイレージバンクアプリの開発に携わらせていただいたことは、事業パートナーとしてさらに両社の関係値の強化につながったと考えております。
結果、JAL NEOBANKの口座を作られるお客さまも増えたように思いますが、感触としてはいかがでしょうか。
- 大森氏:
- おっしゃる通り、すべてが関係しあってると思います。サービスが拡がっていけば拡がっていくほど、もともと開発していたNEOBANKの口座数が飛躍的に拡大し、新しい取組みにより、これまで積み上げてきたものがより拡がっていくことを実感しています。
- 円山:
- 当初、日本航空さまとBaaS事業をやろうと思った時は、銀行機能をご利用いただければ、口座が増えて預金が増えて、日常使いの給与振込みやローンを借りるかたが増えていくのだろうなと思っていたのですが、最初は、なかなか口座は増えなかった。しかし、住宅ローンをご利用いただくお客さまがとても増えまして、これは日本航空のお客さまの特徴かなと。
- 大森氏:
- 当社のお客さまは、所得や購買が平均よりも高いかたが多く、高額消費などの特徴がございます。クレジットカード会社全体の中でも、JALカードは、一人あたりの消費額はとびぬけて高いのが特徴です。住宅ローンをお借入れされるかたが多いのは、そういった特徴がでているのかもしれません。
- 円山:
- 実は、私も日本航空さまのヘビーユーザーで、かなりご利用させていただいております。当社は、NEOBANKにおいて16の事業会社と提携させていただいておりますが、グループ会社を除きますと、口座数・預金残高も含め、貴社がNo.1でございます。
(2024年4月末時点)
約3,700万人の優良なお客さまの顧客基盤をお持ちであり、当社だけでは獲得できなかったお客さまにご利用いただけているという実感がございます。
- 大森氏:
- 航空以外の事業を拡げるため、様々な異業種の企業と協業を行っていますが、すべてに共通して言える我々の強みは、「優良な顧客基盤・購買データ」を持っていることと、これまで培ってきた「安全・安心のブランド力」です。我々の強みを貴社などの協業先に引き出していただくことで、新しいものを生み出す機会が増えていると感じています。
さらなる飛躍へ向け、「お客さまの日常と非日常をつないで豊かな人生を」サポートし、選ばれるNo.1企業に。
- 円山:
- お互い強みを補完しあって、うまくワークし始めていることを実感しております。2016年からお話を始め、JLPPができたのが2017年、サービス開始が2018年で5年間お付き合いさせていただき、その道のりの中では、ともに産みの苦しみを味わうこともありました。
ここまで成長できた原動力はなんだと思われますか?
- 大森氏:
- 円山さんにおっしゃっていただいた通り、2018年JAL Global WALLETをリリースした後、コロナ禍となり、世の中の動きが止まってしまいました。
もともと目指していた、両替機能を含むプリペイドカード事業は海外での利用を想定していたこともあり、会社存亡の危機に陥ってしまいました。
しかし、その時、国内に焦点を絞ってマイルチャージで新しい事業を始め、国内の購買を刺激するなど、環境の変化に合わせてクイックにビジネスのあり方を変えることができました。
貴社のイノベーティブなかたがたともご一緒に、議論し、素早く動いたことが非常に大きかったと思います。
今は、環境の変化、地政学リスク・為替レートも含め、当社のビジネスを取り巻く環境は刻刻と変わっています。
一度決めた方針を守り抜くということではなく、常に軌道修正しながら環境に合わせて方針を変えていくという姿勢を含め、貴社と一緒にやる中で、私たちも実力を上げることができたのではないかと思ってます。
- 円山:
- そういっていただけますと大変ありがたいです。お付き合いする前の貴社へのイメージは、大企業でいらっしゃるので、意思決定も含め、とても時間がかかるだろうと思っていましたが、どんどん変化され、とてもフレキシブルでスピードの速い企業でいらっしゃると感じております。我々もストレスなく同じ方向・目線で判断できていると思ってます。
- 大森氏:
- 会社全体でみると、安心・安全が最優先でありながらも、新しいものを生み出す部隊、異業種と一緒になって事業を拡げていく部隊に関しては、極力外の方々からの刺激を受けながら、外向き志向を徹底していければと思っています。
- 円山:
- 今回JLPPをジョイントベンチャーでやらせていただき、立ち上げ時は、JALさまの社員のかたが金融を学ぶために当社に半年ぐらい常駐して、当社社員と議論しながらビジネスモデルを作り上げていくというフェーズがありました。
また現在は、当社社員が貴社に常駐し、議論しながら事業を推進するといった関係性が構築できており、ビジネス推進において非常に良い環境だと思っております。
JLPPの雰囲気について、いかがお感じでしょうか?
- 大森氏:
- そうですね。JLPPは色々な人の混成部隊で、それぞれの個性があふれる集団になっております。
こうしてご一緒できているのも、JAL Global WALLET、JAL NEOBANK、ペイメントとステップアップしながら、お互いの信頼関係が積みあがってきているからこそであるという印象です。お互いの異質さを理解しながらも、心地よさ・刺激を感じながらやってきている。時間はかかりますが、お互いの信頼感を高めあえるフェーズに到達できているなと感じております。
- 円山:
- 一つのベンチャー企業を一緒に経営させていただいていることを本当に嬉しく思っております。
- 大森氏:
- はい、私も同じ気持ちです。
- 円山:
- これからの貴社の取組みにおいて、JLPPやNEOBANKをどのように発展させ、どのような商品・サービスを提供していきたいなど、我々に対するご要望などございますでしょうか。
- 大森氏:
- はい。JALマイルライフのスローガンである「お客さまの日常と非日常をつないで豊かな人生を」というスローガンを徹底的に極めていきたいと思っています。
ある意味、事業の幅に制限はなく、領域はすべてだと思っておりまして、お客さまの日常から非日常まですべてのものに関して寄り添っていきたいと考えております。
航空会社は、飛行機に乗っていただく以外、お客さまとの接点が少ないので、日常のなかでJAL・JALグループを感じていただくことをJALマイルライフの中で実現したいです。
その中で色々なサービスの中心にくるのは「決済」で、やはり「決済」の果たす役割は非常に大きいと思っています。
クレジットカードにしても、ペイメントにしても、すべてのサービスに「決済」が関わってきます。
この領域には、これからも新しいテクノロジーがどんどん出てくると思いますので、住信SBIネット銀行さんから教えを請いながら、お客さまに、とにかく使いやすさを感じていただければと思っています。
「非日常でわくわくする」を実現するサービスや商材の開発については自分たちの強みを生かし、貴社からはUI・UXを含め、それを実現する最先端のテクノロジーを注入していただくことにより、お客さまから選ばれるNo.1を目指し、進化してまいります。
- 円山:
- 貴社のNo.1を目指す戦略の実現のため、最先端の金融とテクノロジーを機能としてご提供する立場として、日本航空さまのお役に立てるよう、引き続き取り組んでまいります。
今後ともよろしくお願いいたします。
- 大森氏:
- よろしくお願いいたします。